スイモアマイモ

やかましいオタクのしょーもない独り言 (Twitter:@inrmemk)

私と「あざらしさん」の話

大好きなイラストレーターさんが亡くなった。

お会いしたことがあるのは3回だけ。もちろん本名も知らない。

けれど私は、彼女が生み出した「北海の魔獣 あざらしさん」に癒され、励まされ、救われてきた。感謝の気持ちを込めて、ブログを残す。

 

私があざらしさんに出会ったのは、高校2年の夏だった。

正確な日付は残念ながら覚えていないけど、Twitterで偶然見かけたLINEスタンプ第4弾のイラストに一目惚れした。

2頭身なのか1頭身なのか分からない真ん丸なあざらしが、ほぼ表情を変えずにエセ関西弁でやりたい放題。特に、デフォルメで描かれた人間を無表情でビンタするイラストがめちゃくちゃツボに入った(文字にするとちょっとキモい。でもオタクはいつ使うねんというスタンプとか好きだろ!?)

当時は高校生でバイトも出来ず、常にお金がなかった。また、妙なところでIT音痴だった私は、そもそもどう買えば良いのかわからなかった。有料スタンプを手に入れるには、動画を見たり広告を見たりして少しずつLINEポイント貯めるしかなかった。ある日、やっとの思いで100ポイントを貯め、初めての有料スタンプをダウンロードした。

作者であるグレーさんのTwitterもフォローし、あざらしさん情報は常にチェックするようになった。新しいスタンプや着せ替えが発売されるとなればLINEポイントを貯めまくる。購入方法を理解しバイトも始めたころには、販売開始10分後にはすでに使い始めていた。

それ以降というもの、あざらしさんのスタンプばかり送るため家族も友達も先輩も後輩も、私といえばあざらしさんと言われるまでになった。誕生日にイラストを描いてくれたフォロワーさんや友達は、必ずと言って良いほどあざらしさんを一緒に描いてくれた。

 

高校を卒表し、地元から離れた大学に進学した。(地元に比べれば)東京までの距離はグッと縮まり、様々なイベントにも顔を出せるようになった。

気になっていた同級生がまさかのあざらしさんファンと判明し、一緒にコラボカフェに行った。片道2時間以上かかる道のりにも関わらず付き合ってくれるなんて期待しても良いのでは!?と思ったが、後にフラれた。どう考えてもデートだろうが。その気がないならOKするなよという愚痴は置いておく。苦い記憶ではあるが、あざらしさんに囲まれた空間でご飯を食べたり写真を撮ったことそれ自体は、今思い返しても楽しかった。

また、バイトができるようになったことで、様々なグッズも買えるようになった。

黒地に2人(?)のあざらしさんが寄り添っているシンプルな水筒は日常使いしやすく、よく持ち歩いた。間抜けな私はリュックのポケットに入れていたことを忘れ、かがんだ際に度々落としてしまい泣いた。大きなへこみが出来てしまったため今は使えていないが、大切にしまっている。

「等身大あざらしさん」のぬいぐるみは受注生産で、ちょうどお金がないタイミングに申し込みを受け付けていた。悩み抜いた末に購入は見送ったが、長らく後悔していた。しばらくしてから再販情報が飛び込んできて、うれしさのあまり転げまわった。実家のプ〇さんのようにはしたくないので(妹が抱き着きすぎた)、抱きしめたい衝動をグッと堪え、たまに撫でている。

カメラを持ったあざらしさんと、幼稚園児風のこざらしさんの小さなぬいぐるみは、遊びに出かけるときは一緒に連れていく。おしゃれなカフェ、映画館、小さなライブハウスからドームコンサートまで、色んな場所に出かけた。記念写真をたくさん撮った。私の楽しい、大事な思い出にはいつもあざらしさんが一緒だった。

 

2018年の夏、ギャラリーエルシャダイさんで開催された個展で、初めてグレーさんにお会いした。グレーさんの手が空いてるときに声をかければお話しできたりサインを頂けるという状況に、私は震えまくった。

接触イベントは列に並ばず遠くから見守るタイプのオタクであるため、目の前で話ができてしまうというのがもう、もう、大変な状況である。

その時は、第4弾のスタンプを見た瞬間に一目惚れしたこと、特にあざらしさんがビンタするイラストが大好きなことを伝え、購入した画集へのサインはビンタのイラストを描いてほしいとお願いした。

緊張のあまり早口で、ビンタのイラストを描いてほしいというオタク。間違いなく気持ち悪い。そんな私のお願いにも、グレーさんは笑顔で対応してくださった。

ちなみに2019年の個展では、「令和」の額縁を誇らしげに掲げるあざらしさんを描いてくださった。その場のリクエストを、黒マジック一発描きで仕上げる姿に思わず感嘆のため息が漏れた。

 

大学時代は行動範囲が大幅に広がり、自分で稼いだお金で色んなところに行った。あざらしさんはいつも一緒にいた。

楽しい時だけじゃなく、辛い時も一緒だった。

就活していたころは本当に辛かった。これといったやりたいことはなく、自分のことが嫌いな人間が、どうやって自分を売り込めば良いのか分からなかった。真面目に自己分析をすればするほど、目をそらし続けていた自分の嫌いなところがボロボロ出てくる。短所の輪郭ばかりがはっきりしていき、長所を見つけることができない。内定ももらえず、自分の長所がないことの裏付けのように感じた。

たった1年前までは、嘘みたいに暑くてしょっちゅうバテても、結局夏は楽しかった。炎天下、リクルートスーツを着て歩く夏はただの地獄でしかなかった。

そんな時も、あざらしさんがそばにいた。

文字通りそばに、スーツのポケットにいた。

その年の個展を訪れた際に回したガチャガチャで当てたヌシカンあざらしさん(神主コスプレ)のマグネットを常に持ち歩いていた。優し気に微笑むヌシカンあざらしさんが「すべてうまくいくで 祈ったるわ」とお祓い棒を振っている。面接前にポケットから取り出し、勇気をもらっていた。

 

LINEスタンプはシュールな笑いを誘うイラストが多いが、グレーさんがTwitterにあげたり画集に載せているイラストには、人を勇気づけるあたたかいものも多かった。それは、グレーさん自身が病気を抱えていて、そんな自分を励ますためにあざらしさんが生まれたからだった。

ざらしさんを通して伝えられるグレーさんからのメッセージに、私は何度も何度も元気をもらった。ユーモアに溢れていて、とにかくあったかくて泣けた。

人と比べて自分には悪いところしかない、みんなみたいにうまく出来ないと不貞腐れていた私を、あざらしさんがやさしく包み込んでくれた。「おいちゃんがそばにいるで」と笑いながら。

 

社会人になった今も、昔と一切変わることなくあざらしさんが大好きである。

同居人に帰宅連絡をするときには決まって、「今出たわ!!」と家の窓を突き破って飛び出すあざらしさんのスタンプで連絡している。私に影響された同居人もあざらしさんのスタンプを購入し、私への返信には基本的にあざらしさんを使う。

出かける際も、変わらず小さなぬいぐるみを連れて行く。

つい先日もあざらしさんを連れて外出していた。入院中もTwitterを続けていたグレーさんが、1か月以上更新していないことが心配になりどうしているだろうかと話していた。少し嫌な予感はしたが、きっとまた「復活しましたー!」と言ってくれる。そう信じていた。

もうその時にはグレーさんが旅立っていたなんて、今でも信じられない。

 

私はあまり、リプライやメッセージを送ってこなかった。そういうファンとしての在り方を悪いとは思わない。でも「この想いは言葉に表しきれない」とか考えるなら、伝えたいだけ伝えればよかったのだと後悔する。

だから書いた。私とあざらしさんとの日々を。あなたの生み出したキャラクターはこんなに愛されていたと、少しでも伝わりましたでしょうか?

 

グレーさん、ありがとうございました。

今はまだ混乱していて、昔話は拙いながらに話せても感謝の気持ちとかはうまく言葉になりません。

でもこれからも私は、グレーさんが残してくれたあざらしさんを愛していきます。

沢山愛でながら、伝えきれなかった想いを言葉にしていきます。

ファンレター書いておくので、今度お会いした時に受け取ってください。

 

最後に、私とあざらしさん(たち)の旅の思い出を。

一緒に行きたいところはまだまだあります。

 

 

 

 

 

 

横浜の海に現れた北海の魔獣

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ざらしとあざらしさん

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夜景を激写ざらしさん

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がいこく~(ちば)

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忍○まに出てくるお団子を食べた日

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インドかと思いきや築地

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聖地

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普段絵を描く人間じゃないのですごい汗かいた

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うちの子たち

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聖地から等身大あざらしさんを攫おうとする不届き者 is 私

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とってもきれいだね

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